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歯科技工士~「歯を作る」職人たち~

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院長と技工所の対談

大原歯科医院院長の大原敏正先生と、藤野歯科補綴研究所所長で愛知県歯科技工士会副会長の藤野進さんに対談形式でインタビューを行いました。

歯科技工とより良い歯科補綴物について

大原:まずはじめに「歯科技工」についてご説明頂けますか。


藤野:「歯科技工」とは患者さんのお口の中で、虫歯や歯槽膿漏で無くなった歯の一部や歯の形を回復して、元あったような機能や審美性を回復する「もの」を作る作業のことを言います。

2年間の専門教育を受け国家試験に合格した者だけがなれる口腔の専門職です。国家試験が通ってから更に2年間のより高度な専門技術を習得するコースもあり、通常1人前になるには10年はかかります。その間に入れ歯や被せ物、セラミックの歯などそれぞれの分野に分かれて専門性を持って行きます。


大原:専門性が高い分、随分とキャリアがかかるのですね。


藤野:そうなんです。その為途中であきらめて辞めてしまう人もかなり多く、せっかく国家試験まで取得しても離職率が高く、最近では5年以内に75%が辞めていくという統計もあります。今の時代そこまでやらなくても簡単にお金が手に入ってしまう様になりましたから、今の子達にとっては、また親さんにとっても非常に長いと感じるのでしょうね。しかしこれからの時代は本当に将来まで生かせる技術を身につけることが大切だと思います。

また最近では「歯科技工」の一部が外国、特に中国に委託されるようになってきました。それは被せ物など補綴物の保険点数が厚生労働省によって長年低く抑えられてきたため、先ほど申し上げた技工士の成り手が無くなると共に、人件費などの経費の安い中国に流れるようになってきました。しかし中国では無資格の人が行っている(たとえ技工士の資格があっても日本の国家試験資格を持っているわけではない)所ばかりです。また使う材料も心配です。


大原:それでは以前新聞を賑わした、中国の品質偽装問題が歯科技工でも起こりうる恐れもありますね。結局患者さんに被害が出る事にもなりかねません。


藤野:そうなんです。他の業種でも同じで価格競争をやり始めますと、結局国内産業が育たない、中国に移転して様々な問題が生まれてきます。そのあたりは政府や国民の健康を守るべき立場の厚生労働省が最もしっかりしてもらわなければならないことと思います。


大原:このような状況を招いているのは、まだまだ日本人の歯への関心度が低いことも原因でしょう。今や世界第2位の経済大国ですが歯並びが悪くても気にしないとか、銀歯を入れていても無関心であるとか、歯が生命に直接関係がないと思いがちで、欧米では考えられません。しっかりとかめて、自然な綺麗な歯でいられることは間違いなく幸せな、現在はもとより老後の人生の充実を約束するものと私は考えます。患者さんに綺麗な白い歯を入れて差し上げると、今までうつむいていらっしゃった方がはつらつとして、明るくなられますね。間違いなく心の持ち様、つまり性格まで変わると思います。

またこのように患者さんの健康だけに及ばず、人生にまで口元の健康は影響を及ぼすのだという意識を、是非歯科技工士の方達にも持ってもらいたいですね。私はその為、技工士さんに診療の現場に来てもらい直に患者さんの満足度を肌で感じてもらったりしています。確かに技工士さんを取り巻く環境が厳しいとは思いますが。


藤野:大原先生の所では私どもの技工士は良く技術の向上と、医療に関わっているのだという自覚を促すために、積極的に診療現場に立ち会わせてもらって感謝しています。患者さんに直にお会いし、ご希望もお聞きするとより良いものが出来ると皆思っております。しかし先生の診療時間や当方の技工時間を削ることにもなりますのでなかなか総てに対応することは難しいですね。

そこで技工指示書が大切になってきます。これはいわゆる注文書ですね。その中に様々な情報を書き入れてもらうわけですが、大原先生の所にはそれともう一つ「技工士ノート」というものを作っています。これは先生から受けた仕事で患者さんごとに歯の色や形、かみ合わせなどのデーターを記録したもので、既に10年以上の蓄積があり常に改善しています。その為被せ物や入れ歯などの修理時には大変に役立っています。


大原:当院が藤野歯科補綴さんと長いつきあいが出来るのも、ただ技術力の高さだけでなく、いつもより良いものを作ろうとする責任感や信頼関係を築いていこうと努力してくれているからです。私どもの診療室でも昭和58年の開業以来、患者さんの一人一人のデーターは総て保管しています。既に8000件近くあります。10数年ぶりに来られた患者さんで、以前の治療に関して説明をしたところ大変に感激されたこともあります。これが患者さんが信頼して下さる大きなポイントではないでしょうか。

藤野技研さんは結構規模が大きい方ですね。歯科技工所も個人経営と大規模経営と2極化が進んでいると聞きますが、これからも大きくしていくのですか?


藤野:うちは今、私を入れて8人体制です。10人以上にすることは考えていません。人数が多いと品質管理が難しくなるからです。歯科技工は他の業界にはない1個1個のフルオーダーメイドだからです。私が被せ物を担当し、息子の専務が入れ歯のチームをまとめています。私の下には部下が4人いますが、全部に目を通して常にレベルを保つ様にしていますと5人までが限界です。人数を増やさない方が、1つ1つの仕事を丁寧に受けられますし結果として信頼につながると考えています。

また技工士のレベルアップのために技工コンテストへの参加も促しています。おかげさまで、最近2年連続でうちの技工士2名が最優秀賞を受賞しました。また常にアンテナを張り新しい技術を習得する努力も欠かさず行っています。最近ではコスモデンチャーという入れ歯の新技術を導入しました。


大原:それは期待できますね。新技術の取り組みはなかなか大変です。いつも前向きに取り組んでいる姿勢には心強く思います。しかし新しいものが必ずしも長く安心して使えるものではないこともあり、ある程度の期間臨床成績を見てから導入することも大切と考えます。我々は生体を相手とするわけで失敗は許されませんから。

例えば歯の詰め物は私は今でもゴールドが最良だと思います。審美性から見たら白い詰め物の方が良いのでしょうが、20カラット以上(83%以上の金含有)のもので正確に作られたものなら優に20年以上の耐久性があります。白い材料ではそれほど長く機能しているものはほとんどありませんからね。また最近では何でもインプラントを勧める傾向がありますが、不可能なケースもあり、その場合やはり入れ歯に頼るしかないのです。私の行っている「生理的総入れ歯」は、どこでも見放された患者さんの最後の救いの入れ歯だと自負しています。非常に手間のかかった義歯ですが、装着による違和感が非常に少なく良くかめ、驚く程患者さんの評判が良いですね。


藤野:それは判る気がします。技工作業も難しく技工士泣かせでもありますが本当に作り甲斐があります。よくうちの技工士が言いますが、先生の歯冠形成(被せるために歯を削ること)は素晴らしい芸術品だと。


大原:ありがとうございます。藤野さんがより良いものをいつも一生懸命作ってくれるので自然に私も力が入ります。お陰様でそれを理解して下さる患者さんも多く、ここまで来れました。実は患者さんの中には歯科医師の方も結構いらっしゃいます。現在も2名来られています。


藤野:同業者からも信頼されているのですね。私も作り甲斐があります。これからも先生の期待に添うよう頑張っていきたいと思っています。


大原:私もいつもそう思っています。今日は有り難うございました。


藤野歯科補綴研究所のご紹介

商号 (有)藤野歯科補綴研究所
創立年月日 1971年4月1日
所在地 〒466-0855
名古屋市昭和区川名本町1丁目3番地の1
代表 代表取締役 藤野進
電話 (052)762-8362
FAX (052)762-8398
ホームページ

インタビューを終えて

この他にも最新のCAD/CAMや虫歯治療のことなど、様々なお話をしていただきました。また機会があればご紹介したいと思います。

お話を聞いていて感じたのが、お二人とも仕事の質に対するこだわりが非常に強いということです。大原先生は口の中の型を取る時に、少しでもずれていると感じたら何度でも取り直しをするそうです。藤野さんも大原先生の取った型が少しでもずれていると感じたら取り直しをするようにお願いするそうです。私たち患者側からすると、歯医者さんがどんな風に仕事をしているかはわからないので、手を抜くこともできそうですが、そこで甘えちゃいけない、ということをしきりにおっしゃっていました。

私も大原先生にお会いするまでは、義歯なんてお年寄りのもの、不便なものというイメージでしたが、お話しを聞いて義歯に対する印象がガラリと変わりました。私も歯がなくなったら大原先生に義歯を作ってもらいたいと思います。もちろん、歯を無くさないために日々の歯磨きをしっかりとしないといけませんね。

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